2017年4月10日月曜日

第1章 原子構造 練習問題に対するコメント

 「SA無機化学(上)」第6版の練習問題(場合によっては演習問題も)に対するコメントを述べていく。参考になるか否かは読者に任せることとする。

 今回は第1章の練習問題を扱う。(pp.36-37)

1・1 電子が1個しかないということが分かっているので、水素型原子としてエネルギー順位を考えればよいという予想がつく。あとは式に当てはめるだけで答えが出るであろう。

1・2 用いたい座標系の体積要素がどうなっているのかを考えるとよいのではないだろうか。3次元の座標に関して、体積要素を知りたければ、解析学の教科書を調べるとよい。

1・3 イオン化という現象を”電子”を主語にして説明するところから始めよう。さすれば数式化も苦ではないはず。イオン化エネルギーを説明させる問題としては良い問題であると思う。

1・4 多電子原子になった瞬間に、扱い方が違ってくるという点を押さえておけばよい。

1・5 状況を整理しよう。「放射光をクリプトンに照射する」という行為によってエネルギーを与えた。すると、ある速度で「電子が放出された」とあることから、電子が自らがいた準位から、無限遠方に飛んで行ったということを示唆している。また、「放出された」電子が速度を持っていることから、運動エネルギーを持っているということが分かる。このとき、エネルギー保存則を考えるとよい。

1・6、1・7、1・8 水素原子について問われているので、問題なくエネルギー準位の計算ができるはずである。あとはエネルギー準位の差を計算すれば良い話である。

1・9 答え自体は教科書を読んでいれば見つかるであろうが、”なぜ主量子数が方位量子数を制限するのか”ということを答えようとすると難しいのではなかろうか。

1・10、1・11、1・12 教科書を読んでいればわかる問題かと思われる。詳しいことを知りたければ、物理化学の量子論に関するページや量子化学に関する本を読むとよいのではなかろうか。

1・13 動径分布関数の違いに関して、横軸と交わらないかそうでないかを述べ、それが動径分布関数の違いにどのような現れるかを論じ、最後にそれをそれぞれの軌道の図に照らし合わせるとよいのではないだろうか。

1・14 特殊関数や物理数学、量子力学、量子化学の教科書から2p, 3p, 3d軌道の動径分布関数を引用または計算し、極大を示す位置がどこであるかを考えるとよいのではないだろうか。

1・15、1・16 教科書に記述がある。探せば見つかるはずである。

1・17 解答が複数考えられることに注意せよ。

1・18 スレーターの経験則を用いればよい。また、電子数が増えればそれだけ反発力も大きくなるということを示せばよさそうである。

1・19 巻末の付録を用いて、クロムとマンガンの電子配置を調べるとよい。d-ブロック金属などに関しては、スピンの対称性によって、安定性が、短絡的に考えた予想と異なることがある。

1・20 d-ブロック金属の有効核電荷については、別の記事を参照してもらえればよい。

1・21 巻末資料からそれぞれの原子についての第1イオン化エネルギーの大きさを並べてみるとよい。また、ランタノイド収縮とはなんであるかを思い出し、最後に有効核電荷とイオン化エネルギーとの関係を思い出すとよい。

1・22 d-ブロック金属の電子配置を調べれば答えはすぐ出るはずである。また、演習問題1・6と一緒にやるとより学習に役立ちそうである。

1・23、1・24、1・25 基礎化学でも触れられそうな問題である。ただし、スピンの対称性が成立するときには注意が必要である。(d軌道に5個の電子が入るときなど。)

1・26 電子の数の和をとってもらえれば、原子番号がすぐに分かるのではないだろうか。

1・29 ランタノイド収縮について考えればよいのではないだろうか。



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