2017年4月6日木曜日

第1章 原子構造 メモ

第1章 原子構造
「SA無機化学(上)」第6版pp.6-37

到達目標: 原子の構造と電子配置について、量子力学の視点と化学の視点からそれぞれ考察し、それぞれの視点で用いられる用語などを対応づける。

水素型原子の原子構造と電子配置

キーワード: シュレディンガー方程式、量子力学、 主量子数、 軌道角運動量量子数(方位量子数)、 磁気量子数、 電子殻、 副殻、 電子スピン、 動径分布関数、 角波動関数、 ラゲール陪多項式{特殊関数、物理数学}、 球面調和関数{特殊関数、物理数学}、ルジャンドル陪多項式{特殊関数、物理数学}
 
多電子原子の原子構造と電子配置

キーワード: 遮蔽、 貫入(浸透)、 有効核電荷(実効核電荷)、 パウリの排他原理、 ガウスの法則{電磁気学}、 摂動論{量子力学、量子化学}、 変分法{量子力学、量子化学}、 SCF法(つじつまの合う場の方法、 自己無撞着場の方法){量子力学、量子化学}、 ハートリー・フォックの方法(Hartree-Fockの方法){量子力学、量子化学}、 構成原理、 フントの規則、 スピン相関、 原子半径、 ランタノイド収縮、 イオン化エネルギー、 電子親和力、 電気陰性度、 マリケンの電気陰性度、 ポーリングの電気陰性度、 オールレッド・ロコウの電気陰性度、分極率

参考文献集

書籍

「詳解 量子化学の基礎」 類家正稔 著 東京電機大学出版会
 下記の「マッカーリ・サイモン物理化学(上) -分子論的アプローチ-」と同様に、量子化学、量子力学、量子力学に関する数学に触れたことのない人が読んでも理解できるように作られている量子化学の教科書である。計算がかなり丁寧に解説されている。計算一行一行にどんな操作がなされたのかが記載されている。他の本を読んで、量子力学、量子化学の計算に躓いたときは、この本の該当部分を読むとよい。
 「SA無機化学(上)」の第1章を読むうえでは、9~12章が範囲に合致する。「SA無機化学(上)」1章、2章を取り組むうえでのバックボーンになりうるような教科書である。

「物理のための応用数学」 小野寺嘉孝 著 裳華房
 (やや天下り的だが、)量子力学に出てくる特殊関数に関する記載が充実している。直交性、完全性を熟知していると、なおのことスムーズに読めると考えられる。特に多項式に関する部分に目を通しておくとよい。下記の「マッカーリ・サイモン物理化学(上) -分子論的アプローチ-」の章末にある計算問題などを解くうえで参考になるかと思われる。

「マッカーリ・サイモン物理化学(上) -分子論的アプローチー」 千葉秀昭、 江口太郎、 齋藤一弥 訳 東京化学同人
 量子力学・量子化学の章末の問題が充実している。(むしろ多いと感じるかもしれない。)定性的に納得したければ、他の物理化学の教科書を読めばよいが、定量的に納得したければ、これを読むとよい。
 物理で扱うような数学(線形代数、複素解析、フーリエ変換、特殊関数)に慣れているのであれば、数学章は飛ばしてしまってもよい。量子力学を学んでいる人は、かなりの部分(特に前半部分)を省略できる。このような人は既知の事項に関する章末の問題を勇気をもって省略すると効率的であろう。
 こちらも「SA無機化学(上)」1章、2章を取り組むうえでのバックボーンとなりうる教科書である。特に6~10章を読み込む必要がある。

「量子力学(Ⅰ)」 小出昭一朗 著 裳華房
 本自体に厚みはそれほどなく(これ1冊なら)、ある程度天下り的に量子力学の導入を行ってくれるため、初学者でも読みやすいかと思われる。ただし、量子力学に必要な数学の解説がコンパクトであるため、さすがにフーリエ解析、線形代数、特殊関数をある程度知っていなければ厳しいであろう。また、計算もかなり省略されているので、自分で補ってやる必要がある。

雑誌論文

E. Clementi and D. L. Raimondi(1963) "Atomic Screening Constants from SCF Functions" The Journal of Chemical Physics, 38(11): pp.2686-2689
 「SA無機化学(上)」の有効核電荷の表には文献が示されていない。(見落としがあればご指摘お願いいたします。)そのため、原子番号の大きい元素(19番以降)に関してはこの論文に掲載されている有効核電荷を参照した。
 この論文自体には原子番号1~36の原子に関する有効核電荷が記載されている。また、この論文には続きがあり、そちらには原子番号37~86までの原子に関する有効核電荷が記載されている。

L. Lavelle(2008) "Lanthanum (La) and Actinium (Ac) Should Remain in the d-Block" Journal of Chemical Education, 85(11): pp.1482-1483
 演習問題で取り上げられている。(第6版 演習問題1・3)

Peter F. and Barry C. Smith (2003)"Ionization Energies of Atoms and Atomic Ions" Journal of Chemical Education, 80(8): pp.938-946
 演習問題で取り上げられている。(第6版 演習問題1・6、 第4版 1・15、 fifth edition 1・10)

W. H. Eugen Schwarz (2010) "The Full Story of the Electron Configurations of the Transition Elements" Journal of Chemical Education, 87(4): pp.444-448
 演習問題で取り上げられている。(第6版 演習問題1・7)

William B. Jensen (1982)"The Positions of Lanthanum {Actinium} and Lutetium {Lawrencium} in the Periodic Table" Journal of Chemical Education, 59(8): pp.634-636
 演習問題で取り上げられている。(第6版 演習問題1・3、 第4版 1・6 fifth edition 1・6)


ゼミ参加希望のみなさまへ~参加にあたっての注意

 私たちのゼミに参加するにあたって注意事項がございますので、ぜひご一読くださいませ。特に、今回のゼミは学士1年から修士1年(場合によってはそれ以上の方も)の皆様を対象にしております。ゆえに、皆様の実力が多様であるということが考えられます。したがって、参加なさる皆様にはその点を覚悟なさってくださると、うれしく存じます。

 学士1年の皆様へ

 ご入学おめでとうございます。このゼミは、物理化学や熱力学といった無機化学の周辺の学問の知識を用いて無機化学を理解していくという場面が、少なからずあると思われます。したがって、無機化学の周辺の学問についてもある程度学習して頂かねばなりません。また、すぐには理解できないということも多々あるでしょう。
 そのため、学習がおぼつかないとお思いになりましたら、無理をなさらずにご相談ください。また、発表や討論への参加は求めませんが、ゼミ自体にはご参加ください。後々皆様のためになると思われます。

 学士2・3年の皆様へ

 苦労も多いと思われますが、発表、討論への積極的な参加を求めます。また、論文や参考文献を熟読してもらう機会が多くあると思われます。自分の実力を高める機会だと思ってくださると助かります。

 学士4年・修士1年の皆様へ

 物理化学、固体物理学、量子力学等をある程度理解している(していた)と思われますので、ぜひリードしてくださると助かります。

ゼミ参加希望のみなさまへ~具体的な連絡

 ゼミ参加希望者へ注意事項を列挙いたします。熟読くださいませ。皆様のご都合がよろしければ、オリエンテーションも開催いたします。ぜひ、わたくしにご連絡をお願いいたします。また、注意事項にご不明・ご不満な点がございましたら、オリエンテーションの際にご意見をおっしゃってください。

  また、今学期は参加できないという方も、秋学期以降もまた同様の企画を催す予定でありますので、その際にご参加なさるようにお願いいたします。

連絡先: 参加を希望する方は件名に「かゆいところに無機化学参加希望 学類 氏名」と打ち込んでいただいてjishuzemi298@gmail.comまでご連絡をお願いいたします。ただし、大学生以外の方は事前にコンタクトを取ります。また、途中参加についても歓迎いたしますので、ぜひご連絡ください。

目的: 無機化学に関する理解を深める。また、無機化学に関連する学問として、量子力学、量子化学、固体物理学、固体化学、金属学、物理化学、熱力学、電気化学といった学問への理解も同時に深める。

日時: 平日の講義時間帯に開催したいです。(金曜6限と別の時間の週2コマを考えております。)ただし、具体的な日程は皆様とのご相談の上決定したいと存じます。

場所: 筑波大学中央図書館のセミナー室などを予定しております。

人数: グループの人数が3~6人になるように調整いたします。参加希望者が7人以上となった場合は小グループに分け、各グループごとにゼミを開催いたします。

教科書:「シュライバー・アトキンス 無機化学(上)」(版は問いません。)

範囲: 春学期では、1章~8章を扱います。ただし、春学期の終わりまでに到達しない可能性もありますのでご容赦ください。

必要なもの: 教科書、筆記用具。また、自主ゼミ専用のノートを用意していただけるとよろしいかと思います。

形式: 教科書の担当部分を決め、担当者がその部分について40分程度で解説します。その後、質疑応答・討論の時間を設け、疑問点を解消していきます。また、教科書の章末問題等にも取り組みます。また、必要に応じて他の文献を挟んで講読するということもあるかと思いますのでよろしくお願いいたします。もちろん、必要に応じて形式は変更することがあります。

欠席連絡: ゼミグループのメンバーに連絡していただければ問題ありません。ただし、早めの連絡をお願いいたします。

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「SA無機化学(上)」: 「シュライバー・アトキンス無機化学(上)」
「SA無機化学(下)」: 「シュライバー・アトキンス無機化学(下)」

キーワードについて
()で括っている場合は、別の名称を表す。 
     例: 有効核電荷(実行核電荷)
        非共有電子対(孤立電子対、ローンペアー、lone pair)

{}で括っている場合は、主に別の分野で出てくる単語に対して、どの分野の教科書の索引を調べたら、詳細な説明が得られるかを示している。 
     例: ガウスの法則{電磁気学}

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